
パデルを普及させていく上で、テニスとの対比をよくします。
テニスとの共通点や違い伝え、親しみやすさや新鮮さを感じてもらいます。
テニスと違うパデルならではの特徴はいくつかありますが、その中の一つに「(デュース・アドバンテージ)サイドを固定して守る」というのがあります。
現在パデルを頻繁にやっている人の多くは、最初に「パデルってテニスと違ってサイドは固定して守るんだよ」と教えられ、そうなんだと驚き、その通りプレーしつつ現在に至っていると思います。
そしてパデルを始めて間もない人に出会ったとき、当然のことながらその人に「パデルって・・・」と自分が教わったとおり伝えます。
そして自分が驚いたときのように、その人が驚きつつ感心している様子を横目にパデルを続けます。
World Padel Tourではどうでしょうか。
私が見る限りではサイドを固定してプレーしているペアしかいません。
プロもそうしているし、パデル初めて間もない人にそれを教えてあげると「パデルっぽい」ので驚かれ感心される。
非の打ち所がない、人に伝えたいパデルならではの特徴と言えます。
ですが本当にそうでしょうか。
テニスに置き換えてみます。
テニスにもIフォーメーションやサイド固定(オーストラリアンフォーメーション) のフォーメーションもありますし、プロのレベルになるとよく見かけます。
テニス愛好家の方であれば、Iフォーメーションやオーストラリアンフォーメーション知っている方も多いと思います。
でも知識として知っていたとしても、「テニスを始めたばかりの方」に、それらのフォーメーションでのプレーを勧めることも話すこともまずないと思います。
なぜでしょう。
それはきっと、そのテニスを始めたばかりの人にとっては「難しい」 と分かっているからです。
フォーメーションの段階的指導法として、テニススクールでは
①ベースラインでの平行陣
②雁行陣
③ネット前での平行陣
④Iフォーメーションやオーストラリアンフォーメーション等の特殊なフォーメーション
といった順番で指導します。
④に至っては指導することのほうが稀です。

①→③→④→②
にします。
なぜこの順番にするかというと、テニスでもパデルでもこの順番で難しくなっていくからです。
テニスにおいてもパデルにおいても、なぜオーストラリアンフォーメーション(サイド固定)などの特殊なフォーメーションをやるかというと、 そのほうが相手に効果があるからです。
レベルが低いときは自分に意識を向け、レベルが上がっていくにつれ相手に意識を向ける必要が出てきます。
もちろんレベルが低いときにサイド固定でプレーしても一定の効果はあります。
ですが与える効果以上に失うもの(ポイント)があります。
なぜならサイド固定でプレーすること自体が難しいからです。
そしてもう一つ忘れてはいけないのは、それぞれのフォーメーションについてのメリット・デメリットを理解して取り入れているかどうか。
サイド固定にはメリットもありますが、もちろんデメリットもあります。
それを理解した上で自身のプレーに取り入れているのであれば問題ないですが、「最初にパデルするときそう教わったし、プロもそうしてるし」という理由で取り入れるのは危険です。
テニスでもパデルでも、プロが特殊なフォーメーションを取り入れているのは、自分がそのフォーメーションを高い確率でこなせる技量があることを客観的に認識していて、そして相手に対して戦術的な効果を期待してのものです。
パデル始めたばかりの方と一緒にプレーすると、サイド固定でプレーすることが「パデルのルールだと思っていた」という方に時々お会いすることがあります。
サイド固定でプレーすることはルールでも義務でもなく、あくまでも戦術的な要素です。
もし周りにパデル始めたばかりの方がいたら、これらを理解した上で伝えてあげてください。
テニスより簡単だと言われるパデル。
ただ、簡単な中にも基礎や応用、順番というものはあります。