「とりあえずやってみよう」の落とし穴

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ちょっと長くなりますが今回の内容はアルゼンチンに行こうと決めた理由の一つでもあるので、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

「とりあえずやってみよう」に費やした時間を侮ってはいけない

スポーツには「フォームの修正」というものがつきものです。
国内で行われているスポーツの中で、プレシーズンの練習風景がテレビなどのメディアに最も露出するのは野球だと思いますが、多くの選手がこの時期にフォームの修正や改造を行なっている様子を目にします。

なぜこの時期に多くの選手がフォームを修正しているか分かりますか?(「そういう時期だから」はなしですw)

フォームを修正している選手100人中100人が「今より良いプレーをするため」と言うはずです。

ではなぜシーズン中はやらないのでしょう。
もっともっと良いプレーをしたいと思ったら時期関係なくやってもよさそうですが、そういった選手はあまり多くはありません。

なぜなら、フォームの修正をするとほとんどの場合において一旦プレーレベルが下がるからです。

プレーレベルが下がるからシーズン中にはフォームを修正しないんです。

この「フォームを修正するとレベルが下がる」を理解していないと結構苦しみます。

かなり長い期間「前のほうが良かった気がする」という考えが抜けないからです。

このフォームの修正について、体操競技でオリンピックにも出場した筑波大学教授の金子氏はこう述べています。

一度習得した動き方の修正は一筋縄ではいかない。
なぜならこの動き方の修正は、それ以前に習慣化されてしまった動き方を完全に忘れることが求められるからです。
(中略)
すでに身についている古い動き方が定着していればいるほどその解消が難しくなるという矛盾が生じる。
この矛盾に対抗して新しい動き方を身につけるには、従来の動きと新しい動きの微妙な動感差を感じ取ることができる動感分化能力と、定着した動き方を完全に消すことができる解消化能力というものが求められる。

どうですか、修正するのめんどくさくないですか笑

修正するためには動感分化能力と解消化能力という二つの謎の能力が必要になります。

取り入れるかどうかの判断材料

だったら最初からほぼ修正しなくていいフォームを覚えたくありませんか。

私自身こう思いますし、私が提供するものは(少なくとも現時点では)こう思えるものを提供したいと思っています。

なんでもトライしてみることは基本的には良いことです。
新たな発見があるもの事実です。

ですが手当たり次第試してみるというのはちょっと疑問です。

でもそうはいっても「どれがいいかなんてやってみなければ分からない」と思ってしまうのも理解できます。

私が自分のプレーに取り入れるかどうかの判断材料にしているものを以下に挙げておきます。

1.歴史があるか
2.経験や実績があるか
3.多くの選手がやっていることか
4.自分が納得のいくものか

このふるいにかけて下にこぼれ落ちずに残ったものを取り入れる、そんな感覚があります。

我武者羅に頑張ることをやめるきっかけになった本

この逆を考えてみます。

・昨日今日編み出されたばかりの新しいフォーム
・昨日今日始めたばかりの人のアドバイス
・上手な人が誰もやってない打ち方
・自分で納得がいってないもの

冷静に考えたらこれらを取り入れるのって相当勇気要るというか、ネジ2,3本ぶっ飛んでないと取り入れることはできません。(けど不思議なことに実際には結構いるんですよね。。)

とここまで書いてもいまいちピンと来てない方もいらっしゃると思うので、このフォームを修正することの大変さが分かる本があるのでご紹介します。

著者はアテネオリンピックの金メダリスト室伏広治選手の父、重信氏です。
重信氏もアジア選手権5連覇、全日本選手権10連覇といった成績を残した名選手です。

本の内容をざっくりまとめると、

アジア選手権連覇中に「現在のフォームではアジアまで。世界(オリンピック)には通用しない」と感じ、抜本的なフォーム改造に着手。
だがこれまでのフォームが染み付いた身体では新たに取り入れたい身体の動きが出来ないと感じ、これまでのフォームを消すために半年間練習を休む決断をする。
その後この時代では労力も手間もかかるビデオ撮影をしながらの練習を重ね、念願のオリンピック出場を果たす。

初めてこの本を読んだ20代のとき、鳥肌が立ちつつも勇気をもらえたのと同時に、本気な人の考え方と行動力と決断力を目の当たりにし落ち込みました。

すでに結果が出ている状態で今よりより良くなるかは分からなくてもさらに上を目指すと決めてフォーム改造に着手する決断力や、現役のトップ選手でありながら練習をしないと決める勇気(と発想)、スマホで自分のフォームをチェックするのと比べたらおそらく数百倍はめんどくさい、8ミリビデオでのフォームチェックを行うなど、今こうやって書きながら本の内容を思い出すだけで勇気が湧いてきます。

コスパ、タイパのいい選択とは

一方で、一指導者としてはこういった壮絶な努力をしなくて済むプレーヤーを多くしたいという気持ちがあります。
そのためには最初が肝心です。

冒頭の金子氏の話を考慮すると、「ある程度出来るようになったらちゃんと習えばいいや」は実はコスパが悪いということがお分かりいただけたと思います。(コスパという言葉好きじゃない)

最初に間違ったものを身につけた場合、

・そのフォームを身につけるまでにかかった時間
・間違いと気づきそのフォームを消す時間
・新たなフォームを身につけるための時間
・その新たなフォームを洗練させていくための時間

となりますが、最初から間違いの少ないものを選択できた場合、

・そのフォームを身につけるまでにかかった時間
・その新たなフォームを洗練させていくための時間


で済みます。

多少始めるのが遅くなったとしても、スタート時に間違いの少ないものをしっかり選んでから始めることのほうがどう考えてもタイパ良さそうです。(タイパという言葉も好きじゃない)

選手がアサガオだとしたら私は添え木です。

変な方向に伸びた茎を強引に戻そうとすると折れてしまいます。

なのでなるべく変な方向に伸びていかないようにするのがコーチとしての私の役目で、そのためには「変な方向」がわかっている必要があります。

そのために今回アルゼンチンに行きます。
皆さんのお力を貸していただけたら幸いです。

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【追伸】
当アカデミーではレッスンや選手クラス以外にも、

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マッサージガンを探している方、リカバリーに興味がある方はこちらの記事が参考になるかと思います。

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